思いつきで始めたこの Prompt UX Newsletter、開始後間もないのに多くの方に登録いただき、AI(人工知能)の盛り上がりと、期待と不安が織り混ざった現在のAIを取り巻く状況を実感しています。数年まえ「AIに仕事が奪われる?」と話題になり、AI時代に残る仕事、無くなる仕事、新しく生まれる仕事などが議論になりました。
自動化で人間の仕事はなくなるのか? by デイヴィッド・オートー
https://www.ted.com/talks/david_autor_will_automation_take_away_all_our_jobs?language=ja
ChatGPTが広く使われるようになった今、全ての仕事が多かれ少なかれ影響を受けると考えています。AIが進出する領域は、従来AIには代替できないであろう創造的な仕事や、人間ならではの仕事と考えられていた業種でさえもです。ある調査では全人類の仕事のうち18%が自動化され、3億人に影響を与えるとのこと。
さまざまな用途に活用できるChatGPTの利用を特定分野に限定すると、わざわざ細かく質問(プロント)を考えずとも精度の高い回答が得られる日も近いと考えています。そういった状況で、いかに適切な「問い」を投げかけられるかが勝負になってくるわけです。「AIに仕事が奪われるのではなく、AIを使いこなす人に仕事が集まる」ということでしょう。
現在は、まだ完全なるAGI(Artificial General Intelligence:汎用人工知能)は実現していないと考えられています。けれども近い将来、的確な質問や依頼ができなくとも、逆に要件を聞き出したり、それまでの文脈をとらえて「いいかんじ」に対応してくれる専門家集団のような人工知能の登場も近いのではないかと考えています。
ChatGPTで利用されているGPT(General Purpose Technology) 以外の大規模言語モデル(LLM:Large Language Models)も多数登場してきています。けれども性能面や手軽さを考えると、人工知能の研究者でない限り、いまはまだ気にする段階ではないと考えています。まずはChatGPTの使いこなしと「問い」を深めることが重要で、そこで得られたノウハウはほかの人工知能テクノロジーでも応用が効くものだと考えています。
一方 AppleがiOS端末内でローカルで動作する LLM のチューニングを完了しており、リリース準備中との噂も聞きます。利用制限のあるAPIをインターネット経由で駆使せずとも、スマートフォンだけで人工知能へ問い、回答が素早く得られるとなると、さらに人工知能活用の状況が躍進するとも考えられます。
◆OpenAIがブランドガイドを公開。◯◯GPTの名称は禁止
OpenAI Brand Guideline
https://openai.com/brand
ChatGPTの開発もと、OpenAIが、名称などの取り扱いについて明記されたブランドガイドラインを公開しました。このガイドラインの役目としては、OpenAIのブランドイメージを守るという役目ももありますし、利用者に間違った印象を与えたり、人工知能関連サービスへの誤解を招かないための配慮とも言えるものです。
「〇〇GPT」という名称は禁止で、「〇〇 powered by GPT-4」と表記する必要があります。OpenAIのAPIを正式に使っているプロダクトやサービスも、表記に配慮が必要で、「Powered by 〇〇」「Built on 〇〇」などと表すのが正式な表記です。
OpenAIがそのサービスに関わっている誤解させる表記が無いよう表記に工夫がなされています。
使って良い例:
Meowlytics powered by GPT-4
Powered by
Built on
Built with
Developed on
Developed with
使ってはいけない例:
Meowlytics GPT
Meowlytics with GPT-4
Meowlytics AI by OpenAI
ChatGPT-powered Meowlytics
◆ChatGPTは専門職の生産性を高め、仕事の質を向上させる
ChatGPT Lifts Business Professionals’ Productivity and Improves Work Quality
https://u-site.jp/alertbox/chatgpt-productivity
UXデザイナーであればお馴染み?のニールセン博士のAlertboxでもChatGPTが取り上げられました。ChatGPTを活用して仕事した人と、使わずに仕事した人との差を第三者が評価した調査結果です。
結果は…
●作業が早くなり、品質も向上した
●スキルの差が縮まった
(つまり初心者でもChatGPTをうまく使えば素早く品質の高い仕事ができる)
●ChatGPTを利用する場合、作業の時間配分が変わってきた
(そこそこの完成度に素早く達成でき、その後の品質向上に多く時間を使える)
◆極端な利用者像、エクストリームユーザーを導き出す
ペルソナ(仮の人物像)の設定を最大限に活用し、さらにプロダクトやサービスを多くの利用者に使ってもらえるよう、エクストリームユーザーという極端な利用者像を考えることがあります。そういったあまり思いつかない、思いつくのが難しい、極端な利用者を ChatGPT に問いかけることで、発想のきっかけを得ることができます。
まずは、一般的なペルソナから….
プロンプト:チェーン店のカフェ(コーヒーショップ)の利用者像として一般的なペルソナを20種類以内で提示してください。一般的な利用者像が20種類に満たない場合は数が少なくてもかまいません。
ChatGPTの回答:
チェーン店のカフェ(コーヒーショップ)の利用者像として一般的なペルソナは以下のようになります。
学生:勉強や友達との会話のためにカフェを利用する。
ビジネスマン:仕事の合間に一息つくためや打ち合わせの場として利用する。
フリーランサー:仕事や創作活動のために外出先で働く場所として利用する。
若いカップル:デートの場として、リラックスした雰囲気で会話を楽しむ。
主婦・主夫:友達とのランチや一人で読書・雑誌を楽しむ時間を過ごす。
親子連れ:家族で外出先で休憩や軽食を取るために利用する。
高齢者:友達とのおしゃべりや新聞・雑誌を読むためにカフェを利用する。
観光客:外国人や地方から来た観光客が、コーヒーや軽食を楽しみながら休憩する。
通勤・通学途中の人:朝のコーヒーや軽食を求めて立ち寄る。
SNSユーザー:インスタグラムやブログに投稿するために、おしゃれなカフェで写真を撮る。
ペットオーナー:ペットと一緒に休憩できるペットフレンドリーなカフェを利用する。
勉強会・グループ活動参加者:カフェで開催される勉強会やグループ活動に参加する。
カフェ巡り愛好者:様々なチェーン店のカフェを楽しみ、お気に入りのメニューや雰囲気を見つける。
アイドル・俳優ファン:コラボカフェや特典があるカフェを利用する。
リモートワーカー:オフィス外で働くための環境を求めてカフェを利用する。
音楽愛好家:カフェで開催されるライブイベントや音楽鑑賞を楽しむために来る。
カフェギャラリー訪問者:カフェ内で開催されるアート展示や写真展を鑑賞する。
ブックカフェ利用者:カフェ内で提供される本や雑誌を読むために来る読書愛好家。
コーヒー・紅茶愛好家:様々な種類のコーヒーや紅茶を試すためにカフェを訪れる。
エコ・フェアトレード支持者:エコやフェアトレードの取り組みを行っているカフェを意識して利用する。
これらのペルソナは一般的な利用者像を表しており、実際のカフェの利用状況によって多少の違いがあることがあります。また、利用者は複数のペルソナに該当する場合もあります。
プロンプト:チェーン店のカフェ(コーヒーショップ)の利用者像として極端な活用、利用をする利用者像をいくつか教えてください。
ChatGPTの回答:
カフェに一日中いる利用者
このタイプの利用者は、カフェに一日中いることがあります。彼らは、仕事や勉強をするためにカフェを利用することが多く、通常は長時間カフェに滞在します。彼らは通常、複数の飲み物や食べ物を注文し、カフェのWi-Fiを利用して、長時間作業を行います。
カフェでミーティングをする利用者
このタイプの利用者は、カフェでビジネスミーティングを行うことがあります。彼らは、通常、他の人々と一緒にカフェに来て、会話をしながらコーヒーや軽食を楽しむことが多いです。
カフェを自分のオフィス代わりとして利用する利用者
このタイプの利用者は、カフェを自分のオフィス代わりとして利用することがあります。彼らは、仕事をするためにカフェに行き、電源とWi-Fiにアクセスして作業をします。通常、複数の飲み物や食べ物を注文し、長時間カフェに滞在します。
大量のコーヒーを購入する利用者
このタイプの利用者は、通常、大量のコーヒーを購入します。彼らは、コーヒーに依存しているか、または家族や同僚などのためにコーヒーを購入している場合があります。彼らは通常、コーヒー豆やグラウンドコーヒー、またはホットコーヒーまたはアイスコーヒーを注文します。
プロンプト:お菓子好きの人向けのサブスクリプション(定額購買)サービスを考えたとき、どういった利用者像が考えられるでしょうか?一般的な利用者像、極端な利用者像、利用者像を10種類考えてください。
ChatGPTの回答:お菓子好きの人向けのサブスクリプションサービスを考えた場合、以下のような一般的な利用者像や極端な利用者像が考えられます。
一般的な利用者像:
お菓子が好きで、種類に制限のない人
家族や友人にお菓子を配るために利用する人
毎月のお菓子の購入を忘れがちな人
新しいお菓子を試したい人
極端な利用者像:
お菓子にこだわりがあり、毎日お菓子を食べる人
一度に大量のお菓子を購入する人
お菓子をコレクションしている人
お菓子のレビューサイトやSNSで発信するフードロガーの人
独自のお菓子のレシピを考案するために、新しいお菓子の材料を探す人
お菓子の製造業者や販売店として、ビジネスとして利用する人
これらの利用者像に応じて、お菓子の種類や量、価格帯などを調整し、サブスクリプションサービスの魅力を高めることができます。
さらにChatGPTに50個教えてくださいと質問すると、一般的な回答からさらに範囲を広げ、パッケージデザインにこだわる人、おかし作りの参考にする人、旅行先で食べたお菓子を入手しようとする人、地元のお菓子を懐かしがる人、ビーガン、ベジタリアン、ハラール、コーシャなどの特定の食生活に合わせたお菓子、アレルギー対応、お酒のつまみとしてのお菓子、パッケージやデザインに凝ったお菓子など、さまざまなアイデアやヒントが得られます。
一般的な人物像についても、「こういった利用者は自分たちのサービスからは除外する」といった検討にも使えるため、調査時間をかけず網羅性のある状況理解にはとても便利に使えると考えています。
もちろん今までに存在しなかったような突拍子も無いサービスを考えるには向かない?!と考えるかもしれませんが、それさえも ChatGPTは回答してくれますよ!
◆UXライティングの候補をChatGPTで
ユーザーインタフェースの要素の一つとして文字や文言は大切です。最近では広告などのコピーライティングと棲み分けるため「UXライティング」と呼ばれ、プロダクトやサービスによっては専門職としてUXライターが数人在籍している場合もあります。
UXライティングの工程で、複数のメッセージ候補を捻出し、そこから適切なものを選ぶという作業を行います。あるひとつのメッセージを最初から完璧なもの、素晴らしい文言を一発で導き出そうとすると難しいですが、複数の選択肢からどれが良いのか、メッセージAとメッセージBのどちらが向いているのかは、比較的素早く正しい判断がしやすい傾向にあります。そんな作業の一端をChatGPTに支援してもらうことができます。
プロンプト:モバイルアプリで、ログインに失敗した際のエラーメッセージの候補を5つ教えてください。またログインに失敗したことを示す画面に必要な要素を全て提示してください。
ChatGPTの回答:
ログインに失敗した際のエラーメッセージの候補:
ユーザー名またはパスワードが正しくありません。再度確認してください。
アカウントが存在しません。登録がまだの場合は新規登録をお願いします。
アカウントが一時的にロックされています。しばらくしてから再度お試しください。
入力された情報に誤りがあります。もう一度入力してください。
システムエラーが発生しました。しばらくしてから再度お試しください。
ログインに失敗したことを示す画面に必要な要素:
エラーメッセージ: 上記で挙げたエラーメッセージのうち、適切なものを表示します。
ユーザー名入力欄: ユーザー名を入力するためのテキストボックス。
パスワード入力欄: パスワードを入力するためのテキストボックス。
ログインボタン: ユーザーが再度ログインを試みるためのボタン。
パスワードを忘れた場合のリンク: パスワードのリセット手続きを行うためのリンク。
新規登録リンク: アカウントを持っていないユーザーが新規登録できるリンク。
アプリのロゴまたはブランド名: アプリのアイデンティティを表示。
エラーアイコン: エラーメッセージの前に表示される、エラーを示すアイコン。
これらの要素を組み合わせることで、ユーザーにログイン失敗の理由と対処方法をわかりやすく伝えることができます。
プロンプト:「ユーザー名またはパスワードが正しくありません。再度確認してください。」という文言を意味はそのままでもっと短くしてください。
ChatGPTの回答:ユーザー名/パスワード不正。再確認をお願いします。
プロンプト:さらに短く
ChatGPTの回答:認証失敗。再試行。
UXライティングも、時と場合によっては、さまざまな言い換えを行います。ChatGPTを活用すると、とても丁寧な言葉遣いを考えなければいけない時、フレンドリーな言葉遣いで考えなければいけない時、1文字でも少ない文字数で考えなければいけない時など、さまざまな状況での言い換えのヒントを得ることができるでしょう。
◆Jobs to Be Doneのフレームワーク作りに ChatGPTを活用
Mastering ChatGPT+‘Jobs to Be Done’ Activities in Design Thinking: A Comprehensive Guide for the Digital Era
https://bootcamp.uxdesign.cc/mastering-chatgpt-jobs-to-be-done-activities-in-design-thinking-a-comprehensive-guide-for-the-c29cc24a7c5a
現在の仕事の状況を把握するためにフレームワークJobs to Be Done(ジョブ理論)を活用することがあります。これは、顧客はサービスやプロダクトそのものを使いたいわけではなく、自分の仕事を終わらせたいから、そのツールを利用しているだけなのだという考え方です。
●行うべき仕事を理解するためにChatGPTで質問リストを作成する
●意見やインタビューの情報から共通のテーマやパターンを特定する
●見つかった要素を、ChatGPTで分類し整理する
●発見や気づきを、具体的にChatGPTで言い換える
●記述内容の抜け漏れを、ChatGPTに補足してもらう
日本では春の大型連休ゴールデンウィークに突入しました。楽しく穏やかな休日をお過ごしください!
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